住まいや建物を、誰もが使いやすいものにする考え方として、バリアフリーデザインとユニバーサルデザインがよく知られています。この二つはよく似ているため混同されがちですが、その発想や対象には明確な違いがあります。どちらを採用すべきかは、建物の種類や目的によって変わってきます。
本記事では、バリアフリーデザインとユニバーサルデザインの違いを整理したうえで、建物ごとの向き不向き、そしてそれぞれをどんなケースで採用すべきかを解説します。建物づくりでどちらの考え方を取り入れるか迷っている方の参考になれば幸いです。
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バリアフリーデザインとユニバーサルデザインは、どちらも使いやすさを目指す点では共通していますが、その根本の発想にはいくつもの違いがあります。この違いを理解することで、状況に応じて適切な考え方を選べます。ここでは、両者の主な違いを次の五つの観点から見ていきましょう。
バリアフリーデザインとユニバーサルデザインの最も大きな違いは、対象とする人の範囲です。バリアフリーデザインは、主に高齢の方や体の不自由な方など、特定の困りごとを抱えた人を対象に、その人たちが感じる障壁を取り除くことを目指します。誰が使うかがある程度はっきりしている点が特徴です。
一方、ユニバーサルデザインは、年齢や体の状態、能力の違いにかかわらず、できるだけ多くの人が使えることを目指します。特定の誰かではなく、あらゆる人を対象にする点が、ユニバーサルデザインの発想の根本にあります。
たとえば、車いすの人のために手すりを付けるのはバリアフリーの発想であり、はじめから誰もが使える平らな入口にするのはユニバーサルの発想といえます。対象を絞って困りごとを解決するか、すべての人を見据えて設計するか。この対象の範囲の違いが、両者を分ける最も基本的な違いになります。誰のために設計するかが、両者を分ける出発点です。
二つ目の違いは、障壁への向き合い方の発想です。バリアフリーデザインは、すでに存在する段差や使いにくさといった障壁を、後から取り除くことに重点を置きます。今ある不便を解消し、安全に暮らせるようにするという、問題解決の発想が中心です。
これに対してユニバーサルデザインは、そもそも障壁が生まれないように、最初から設計する発想に立っています。問題が起きてから直すのではなく、はじめから誰もが困らないようにつくるという、先を見越した考え方が特徴です。
たとえば、既存の家に手すりを後付けするのはバリアフリー、新築の段階で誰もが使いやすい間取りにするのはユニバーサルの発想です。障壁を取り除くか、そもそも作らないか。この向き合い方の違いは、両者の考え方の根本的な差を表しています。後から直すか、先に防ぐかという姿勢の違いが、両者を特徴づけています。
三つ目の違いは、それぞれを導入する時期です。バリアフリーデザインは、多くの場合、すでにある建物に対して、必要が生じてから取り入れられます。家族に介護が必要になった、高齢になって暮らしにくくなったといった、具体的なきっかけがあって改修するケースが一般的です。
一方、ユニバーサルデザインは、建物を新しくつくる、設計の初期段階から取り入れるのが基本です。まだ誰が使うか分からない段階から、あらゆる人を想定して設計に組み込むため、後付けではなく、はじめから計画に含める点が特徴です。
もちろん、バリアフリーを新築時に取り入れることも、ユニバーサルの考え方で既存の建物を改善することもあります。しかし、一般的な傾向としては、バリアフリーは必要が生じてから、ユニバーサルは最初から、という時期の違いがあります。いつ取り入れるかという時期の違いも、両者を理解するうえで重要な視点になります。導入の時期が、両者の性格を映し出します。
四つ目の違いは、見た目や特別感の出方です。バリアフリーデザインは、特定の困りごとに対応するため、手すりやスロープといった、その目的がはっきり分かる設備が目立ちやすい傾向があります。そのため、いかにも配慮された設備という印象が出やすい面があります。
一方、ユニバーサルデザインは、誰もが自然に使えることを目指すため、特別な配慮であることが目立たない、さりげない設計になりやすい特徴があります。誰か特定の人のためという印象を与えず、すべての人が同じように使えることで、特別感が生まれにくいのです。
たとえば、車いす専用と分かる設備より、誰もが自然に使える平らな入口のほうが、特別感が出ません。目的がはっきり見える配慮か、自然に溶け込む配慮か。この見た目や特別感の違いは、利用する人の気持ちにも影響する、両者の分かりやすい差といえます。配慮の見え方の違いが、空間の印象を左右します。
五つ目の違いは、費用のかかり方です。バリアフリーデザインは、必要な箇所に絞って対策できるため、比較的少ない費用から始められる場合があります。手すりを一本付ける、段差を一か所なくすといった、部分的な対応が可能な点が特徴です。
一方、ユニバーサルデザインは、建物全体を誰もが使いやすいように設計するため、はじめからある程度まとまった配慮を組み込むことになります。設計の段階から全体を見据えて取り入れるため、後から部分的に足すバリアフリーとは、費用のかかり方の性質が異なります。
ただし、長い目で見ると、はじめからユニバーサルで設計しておくほうが、後から何度も改修するより費用を抑えられる場合もあります。必要に応じて少しずつ対応するか、はじめにまとめて整えるか。費用のかけ方の違いも、どちらを選ぶかを考えるうえで大切な判断材料になります。費用の性質の違いが、選択に影響します。
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バリアフリーデザインとユニバーサルデザインのどちらを採用すべきかは、建物の種類や利用する人の特性によって変わってきます。特定の人が利用する建物ではバリアフリーが、不特定多数が利用する建物ではユニバーサルが適する傾向があります。ここでは、代表的な建物の種類ごとに、どちらのデザインが適しているかを一覧にまとめました。実際には両方の考え方を組み合わせることも多いため、参考の目安として活用してください。
| 建物種別 | 適したデザイン | 備考 |
|---|---|---|
| 戸建て住宅 | バリアフリー | 住む家族の状態に合わせて必要な箇所を整えるのが基本。将来を見込むならユニバーサルの視点も有効 |
| 集合住宅(マンションなど) | どちらも | 共用部分はユニバーサル、各住戸は住む人に合わせたバリアフリーが向く |
| 病院・クリニック | ユニバーサル | 多様な状態の患者が訪れるため、誰もが使える設計が求められる |
| 高齢者施設・介護施設 | バリアフリー | 利用者の状態が明確なため、介護しやすい具体的な配慮が中心になる |
| 学校・教育施設 | ユニバーサル | 児童生徒や教職員、来客など幅広い人が使うため全体的な設計が適する |
| 商業施設・店舗 | ユニバーサル | 不特定多数の来客を迎えるため、誰もが使える設計が集客にもつながる |
| 駅・公共交通施設 | ユニバーサル | あらゆる人が利用する公共の場として全体的な配慮が不可欠 |
| 役所・公共施設 | ユニバーサル | すべての住民が等しく利用できることが求められる |
| オフィスビル | どちらも | 共用部はユニバーサル、特定の従業員への配慮はバリアフリーで対応 |
| 宿泊施設(ホテル・旅館) | どちらも | 一般客室はユニバーサル、車いす対応の客室などはバリアフリーで整える |
バリアフリーデザインは、特定の困りごとに的を絞って対応できる、実用的な手法です。どんな場面でバリアフリーが適しているのかを知っておくことで、無駄なく効果的な対策ができます。ここでは、バリアフリーデザインを採用すべき代表的な四つのケースを見ていきましょう。
バリアフリーデザインが最も適しているのは、利用する人がはっきりしていて、その人が特定の困りごとを抱えている場合です。たとえば、同居する高齢の家族のため、あるいは体の不自由な家族のためというように、誰のために整えるかが明確なケースです。
利用する人が分かっていれば、その人の状態や動作に合わせて、必要な配慮を的確に施せます。その人にとって本当に必要な手すりの位置や、通路の幅、設備の工夫を、無駄なく整えられる点が、バリアフリーの強みです。
不特定多数を対象にする場合と違い、特定の人に合わせて設計できるため、より細やかで効果的な対応が可能になります。誰が、どんな困りごとを抱えているかがはっきりしているなら、その人に寄り添ったバリアフリーの対策が、最も適した選択になります。対象が明確なケースこそ、バリアフリーが力を発揮します。
すでにある建物を改修して使いやすくしたい場合も、バリアフリーデザインが適しています。建物の基本的な造りは変えられない中で、必要な箇所に手を加えて障壁を取り除くという、バリアフリーの発想が、改修という状況によく合うためです。
たとえば、長年暮らしてきた家で、段差が気になり始めた、階段の上り下りがつらくなったといった具体的な不便に対して、その箇所だけを改善できます。建物全体を作り直さなくても、困っている部分を的を絞って直せることが、既存の建物における大きな利点です。
新築のように一から設計し直すことが難しい既存の建物では、今ある不便を一つずつ解消していくバリアフリーの手法が現実的です。すでにある住まいや建物を、無理なく使いやすくしたいなら、バリアフリーデザインが最も取り入れやすい選択になります。既存の建物の改善には、バリアフリーが向いています。
介護を前提とした住まいをつくる、あるいは整える場合も、バリアフリーデザインが適したケースです。介護が必要な家族がいる、またはこれから介護が始まるという状況では、介護される人と介護する人の双方にとって、具体的で実用的な配慮が求められます。
介護の場面では、車いすでの移動のしやすさ、立ち座りを助ける手すり、介助しやすい水回りの広さなど、はっきりとした必要性に応える配慮が重要になります。介護という明確な目的に対して、必要な設備を的確に整えられる点で、バリアフリーの手法が力を発揮します。
介護は日々の積み重ねであり、住まいの使いやすさが、介護する人の負担を大きく左右します。介護される人の状態に合わせて、必要な配慮を具体的に施していくことが求められる介護の住まいには、目的に的を絞れるバリアフリーデザインが適しています。介護の住まいには、実用的なバリアフリーが向いています。
限られた予算の中で、範囲を絞って対策したい場合も、バリアフリーデザインが適しています。バリアフリーは、必要な箇所だけを部分的に改善できるため、費用を抑えながら、効果の高い対策から順に進められる柔軟さがあります。
たとえば、まずは最も危険な浴室から手すりを付ける、次に玄関の段差をなくすというように、優先順位をつけて少しずつ整えることができます。すべてを一度に整える必要がなく、予算に応じて段階的に進められる点が、バリアフリーの実用的な利点です。
建物全体を対象にするユニバーサルデザインと違い、困っている部分に絞って対応できるため、無理のない範囲から始められます。費用を抑えたい、あるいはまず必要なところから対策したいという場合には、部分的な対応がしやすいバリアフリーデザインが、現実的で賢い選択になります。予算に応じた対応には、バリアフリーが適しています。
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ユニバーサルデザインは、あらゆる人が使いやすい環境を、はじめから実現する手法です。どんな場面でユニバーサルが適しているのかを知っておくことで、長く多くの人に役立つ建物をつくれます。ここでは、ユニバーサルデザインを採用すべき代表的な四つのケースを見ていきましょう。
ユニバーサルデザインが最も適しているのは、不特定多数の人が利用する建物です。商業施設や公共施設、駅、病院など、どんな人が訪れるか分からない場所では、あらゆる状態の人に対応できる設計があらかじめ求められます。
利用する人を特定できないからこそ、はじめから誰もが使えるように設計しておく必要があります。高齢の方も、体の不自由な方も、子ども連れの家族も、外国から訪れる人も、誰もが同じように使える環境が、不特定多数の集まる場所には欠かせません。
特定の人に合わせて後から対策するバリアフリーでは、多様な利用者すべてに対応することは困難です。訪れる人が多様で、しかも誰が来るか予測できない建物こそ、あらゆる人を見据えたユニバーサルデザインが最も力を発揮する場面です。多くの人が集まる場所には、ユニバーサルデザインが適しています。
新築で建物を一から設計できる場合も、ユニバーサルデザインが適したケースです。ユニバーサルデザインは、設計の初期段階から取り入れることで、その効果を最大限に発揮します。何もない状態から計画できる新築は、まさにその理想的な機会です。
設計の段階から誰もが使いやすい間取りや設備を組み込めば、後から改修する手間や費用をかけずに、はじめから完成度の高い建物をつくれます。制約の少ない新築だからこそ、動線や広さ、設備のすべてを、あらゆる人を見据えて自由に設計できます。
既存の建物では、構造上の制約から実現できない配慮も、新築であれば無理なく取り入れられます。将来にわたって多くの人が快適に使える建物を目指すなら、新築という機会を生かして、はじめからユニバーサルデザインで設計することが、最も賢明な選択になります。新築の自由度が、ユニバーサルデザインを生かします。
長期的に、多様な利用者を見込む建物にも、ユニバーサルデザインが適しています。建物は一度つくれば長く使われるものであり、その間に利用する人や使われ方は変化していきます。将来にわたってさまざまな人が使うことを見据えるなら、はじめから幅広く対応できる設計が有効です。
たとえば、今は若い世代が中心でも、時とともに利用者が高齢化したり、多様な人が訪れるようになったりすることは十分に考えられます。将来の変化を見越して、あらゆる人に対応できるユニバーサルデザインを取り入れておけば、その都度の改修に頼らずに済みます。
特定の人に合わせるバリアフリーでは、利用者が変わるたびに対応が必要になることがあります。長く使われ、しかも利用者が多様に変化していく建物こそ、はじめから幅広く備えるユニバーサルデザインが適しています。長期的な視点に立つなら、ユニバーサルデザインが有利です。
施設の印象や価値を高めたい場合にも、ユニバーサルデザインが適した選択になります。誰もが使いやすいことに配慮した施設は、多様な人を受け入れる姿勢の表れとして、利用する人や社会から高く評価されます。
あらゆる人に開かれた施設は、それだけ幅広い利用者を迎えられ、より多くの人に選ばれます。誰もが自然に使える洗練された設計は、特別な配慮が目立つことなく、施設全体の上質な印象を高めてくれます。多様性への配慮を大切にする姿勢は、施設や企業への信頼にもつながります。
社会全体で多様性への理解が深まる中、誰もが使いやすい施設であることは、大きな強みになります。施設の魅力を高め、多くの人に長く愛される存在を目指すなら、あらゆる人を受け入れるユニバーサルデザインが、その価値を支える有力な選択になります。施設の価値向上には、ユニバーサルデザインが役立ちます。
バリアフリーデザインとユニバーサルデザインは、どちらも使いやすさを目指しながら、対象とする人の範囲や、障壁への向き合い方、導入の時期などに明確な違いがあります。特定の人の困りごとを取り除くのがバリアフリー、はじめからすべての人が使えるようにするのがユニバーサルと、発想の出発点が異なります。
どちらを採用すべきかは、建物の種類や目的によって変わります。特定の人が利用する住まいや、既存の建物の改修、介護の住まい、予算を絞った対策にはバリアフリーが、不特定多数が利用する施設や、新築、長期的な視点、施設の価値向上にはユニバーサルが適しています。実際には、両方の考え方を組み合わせることも多くあります。
大切なのは、二つの違いを正しく理解し、それぞれの状況に最も合った考え方を選ぶことです。建物と利用する人に寄り添った選択が、誰もが快適に過ごせる空間をつくります。
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